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「遺言執行者」とは?トラブル防止のための相続人への通知義務
「遺言執行者」とは?トラブル防止のための相続人への通知義務
掲載日:2023年10月07日 カテゴリー:資産相続
INDEX
1. 遺言執行者とは??
2. 遺言執行者は辞退できる!?
3. 遺言執行者通知義務ってどんな内容?
4. なぜ義務になったの?
5. 通知の内容
6. 通知のタイミング
7. 遺言執行者は専門家に
8. Written by..
遺言執行者とは??
そもそも遺言執行者とは?ということですが、
遺言執行者とは「遺言書の内容を実現するために必要な手続きをする人」のことです。
遺言書による相続手続きは、時に複雑で時間や手間がかかることがあります。
折角遺言書を書いたのに『相続人が誰も遺言の内容を実現しようとしなかった』、『遺言執行者が定められていなかったから相続手続きに相続人全員の協力が必要になった』といったことがないように、遺言書を作成する際にはしっかりと「この人にお願いしたい」と遺言執行者を定めておくことをお勧め致します。
遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば誰でもなることができます。
この未成年者と破産者は、遺言作成時ではなく遺言の効力発生時なので、作成時に未成年であっても遺言者が死亡するまでに成人になっていれば大丈夫です。
遺言執行者になると、相続財産の調査や相続人の確定など様々な業務をこなしていく必要があります。
この遺言執行者に対して令和元年7月1日の民法改正で新たな義務が課されました。
それが「遺言執行者通知義務」です。
遺言執行者は辞退できる!?
因みに、遺言執行者が様々な義務を負うのは「就任を承諾したとき」です。
なので、就任を承諾する前であれば辞退することが可能です。
辞退の方法は特に決まりはありませんが、言った言わないの新たな揉め事を防止するためにも書面で辞退する旨を相続人に通知しておくことをおすすめします。就任を承諾した後はその意思を撤回することはできません。
どうしても辞任したい事情ができたときは、家庭裁判所の許可を取る必要があります。
「やってみたら思っていたより大変で面倒になった」というような、気持ちは分かるけど・・・という程度の事情であれば認められません。
「病気になった、海外赴任となった、出産や介護で多忙」どの事情は正当事由として辞任が認められます。
また、遺言書は一部の相続人にとって都合が悪い内容の場合も多々あり、その怒りの矛先が遺言執行者向かってしまうことも珍しくありません。
そこで「相続人から嫌がらせを受けた」などの事由でも、辞任を認めてよいと解釈されています。
遺言執行者通知義務ってどんな内容?
遺言執行者の通知義務については民法1007条で定められています。
第2項が新たに追加され、「通知しなければならない」と明記されました。
なぜ義務になったの?
主な理由としては、遺留分を請求する機会をきちんと与えるということがあります。
例えば、【 被相続人:Aさん / 相続人:妻 及び 長い間音信不通になっている息子 】
この状況で、Aさんは一切の財産を妻に相続させるという内容の遺言書を残しました。
この場合、いくら長期間音信不通であろうと息子には法律上認められた最低限相続財産をもらう権利があります。
この権利を遺留分といい、遺留分を請求することを遺留分侵害額請求と言います。
この遺留分侵害額請求は息子自らが主張しなければ認められません。
しかし、改正前の民法では遺言書の内容を他の相続人に通知する義務はなかったため、基本的には通知を行わず
息子は自分に遺留分があったことすら知らずに時効を迎えてしまう可能性がありました。
(遺留分侵害額請求権は、相続が開始したことや遺留分を侵害するような遺贈や贈与などがあったことを遺留分権利者が知ってから1年、
知らなくても相続が開始してから10年が経過すると消滅します。)
実際にこういったケースでトラブルになった事例が多く、このトラブル防止のために相続人にきちんとお知らせしましょうね。
という流れで通知が義務化されました。
通知の内容
「遺言の内容」を通知しないといけないので、遺言書のコピーと一緒に「私が遺言執行者に就任しました」といった内容の書面を送ります。
また、民法1011条により相続財産目録の交付義務もあるので、この時点で相続財産が分かっていれば相続財産目録も一緒に入れておくとスムーズです。
通知のタイミング
遺言執行者就任後と業務終了後に通知が必要です。
また、相続人や包括受遺者※から請求されたときにも、遺言の執行状況を報告する必要があります。
※包括受遺者とは、財産を特定せずに「一切の財産を相続させる」と言われて財産を受け継いだ人のこと
❶ 通知する相手
条文上は「相続人に」となっていますが、相続人以外にも相続人と同様の権利義務を有する「包括受遺者」に対して通知が必要です。
それに対して、特定受遺者※には通知義務はありません。
※特定受遺者とは、「○○を相続させる」と財産を特定して贈与されている人のこと
❷ 通知しなかったらどうなる?
遺言執行者が通知義務違反をすると損害賠償責任や解任事由に該当する可能性があります。
遺言執行者は専門家に
今回は遺言執行者の通知義務についてまとめてみました。
遺言執行者は相続人の確定や財産調査など様々な業務を行います。
その上、今回の義務化により相続人への通知も必要となり、時間的にも精神的にも負担が増えました。
冒頭にも書きましたが、遺言執行者は未成年者と破産者以外であれば誰でも就任することができます。
しかし、誰でも簡単にこなせる業務ではありません。
スムーズな相続手続きのため、ときに専門家を交えながらしっかりと話し合うことが大切です。
Written by..
進藤 亜由子 氏
ふくおか司法書士法人 共同代表
1985年、福岡市西区出身。早稲田大学在学中の平成19年度最年少での司法書士試験合格から現在に至るまで司法書士業界一筋。
大手ディベロッパー会社の登記を一手に請け負う東京の司法書士事務所で不動産登記の経験を積み、地元の福岡に戻り、債務整理手続きに特化した司法書士法人で債務整理の経験を積んだ後、独立し伊都司法書士事務所を開設。開業当初より地銀や大手ハウスメーカーからの指定を受け多くの登記手続きを受任。更に債務整理事務所勤務の経験も活かし借金に悩む多くの方の借金問題を解決へと導く。
その後、ふくおか司法書士法人を立ち上げる。他の事務所で断られた複雑な案件を解決し続け、その実績をコラムで紹介。記事を見て全国から相談者が集まる。現在は、相続・遺言手続きセンター福岡支部を運営。事務所内に相続に特化した専門チームを作り、相続に強い司法書士として日々多くの相談に応じている。
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折角遺言書を書いたのに『相続人が誰も遺言の内容を実現しようとしなかった』、『遺言執行者が定められていなかったから相続手続きに相続人全員の協力が必要になった』といったことがないように、遺言書を作成する際にはしっかりと「この人にお願いしたい」と遺言執行者を定めておくことをお勧め致します。
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この未成年者と破産者は、遺言作成時ではなく遺言の効力発生時なので、作成時に未成年であっても遺言者が死亡するまでに成人になっていれば大丈夫です。
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この遺言執行者に対して令和元年7月1日の民法改正で新たな義務が課されました。
それが「遺言執行者通知義務」です。